大江戸シンデレラ

されども、二人が部屋を出て行ったのを見計らって、穏やかだったお内儀(かみ)の顔つきが、がらりと変わった。

一段と声を落とし、息の音だけで早口でささやく。


「舞ひつる、幼き頃より今日まで、この久喜萬字屋のために身を粉にして働いてくれて、本当にご苦労だったね。礼を云うよ、ありがとう。

裏に駕籠(かご)を待たせてあるから、このまま身一つで構わない。

……今すぐ、見世から出て行ってもらうよ」

< 122 / 460 >

この作品をシェア

pagetop