大江戸シンデレラ
゜゚・*:.。. .。.:*・゜゚・*:.。. .。.:*・゜゚
突然の我が身一つでの「夜逃げ」となってしまった。
舞ひつるが久喜萬字屋の裏口から外へ出ると、お内儀の云ったとおり駕籠舁きが待っていた。
二人とも、一見しなやかそうな軀つきではあったが、大人の男すら担いで動くのだ。
おそらく、屈強な体力を持ち合わせているに違いない。
到底、逃げられるものではない。
二人のうちの片方が、四つ手駕籠の垂れ筵をひらりと上げた。
四つ手駕籠は町家の者がよく使う駕籠で、辻駕籠とも呼ばれる。
舞ひつるはなにも云うことなく、駕籠の中に入った。
すぐに、駕籠の筵が下される。
これで、お内儀のほかはだれ一人として暇乞いの挨拶を申すことなく、吉原から姿を消すことになった。
不義理の極みに、思わずくちびるを噛みしめる。
それに……
——若さまは……今ごろ、お稲荷さんで……
きっと、わっちをお待ちになっとりんす……
突然の我が身一つでの「夜逃げ」となってしまった。
舞ひつるが久喜萬字屋の裏口から外へ出ると、お内儀の云ったとおり駕籠舁きが待っていた。
二人とも、一見しなやかそうな軀つきではあったが、大人の男すら担いで動くのだ。
おそらく、屈強な体力を持ち合わせているに違いない。
到底、逃げられるものではない。
二人のうちの片方が、四つ手駕籠の垂れ筵をひらりと上げた。
四つ手駕籠は町家の者がよく使う駕籠で、辻駕籠とも呼ばれる。
舞ひつるはなにも云うことなく、駕籠の中に入った。
すぐに、駕籠の筵が下される。
これで、お内儀のほかはだれ一人として暇乞いの挨拶を申すことなく、吉原から姿を消すことになった。
不義理の極みに、思わずくちびるを噛みしめる。
それに……
——若さまは……今ごろ、お稲荷さんで……
きっと、わっちをお待ちになっとりんす……