大江戸シンデレラ
舞ひつるは、しまった、と思った。
あわてて起き上がった拍子に、夜具の端から巾着袋がちらりと見えてしまっていた。
「なにをしておる。早う見せないか」
女がじろり、と舞ひつるを見る。
舞ひつるはたじろいだ。
今まで育ててくれた久喜萬字屋のお内儀の最後の「温情」だが、かなりの大金だ。
何処のだれであるのか、さっぱりわからぬ相手には、見せたくなかった。
「まさか……疾しいものでも入っておるのではあるまいな」
女の目が凍てついていた。
あらぬ疑いをかけられ、武家言葉で否定しようにも、なんと云っていいのか皆目わからない。
舞ひつるは、ただぶんぶんと首を左右に振るしかなかった。
「では、差し出されよう」
女は取り付く島もなく、求める。