大江戸シンデレラ
「まぁ……すべて預かるのも荷が重いゆえ、
この方はそなたが持つがよい」
女は、巾着から一文銭・四文銭などが入った袋を取り出し、それのみを返してきた。
三つのうち一番大きな袋ではあったが、すべて足しても一番小さな袋に入っている二分金一枚どころか一分金一枚にも及ばぬであろう。
舞ひつるは黙ってそれを受け取りつつも、知らず識らずのうちに唇を噛み締めていた。
「なにか、文句でもござるのか」
ぎろり、と女に睨まれる。
舞ひつるは、またあわてて首を振る羽目になった。
「そなたは、他人様から此処までの心遣いを受けてもなお『ありがとうございまする』の言葉一つ云えぬのか。
……恩義も解せぬ、戯け者めが」
女は吐いて捨てるがごとく云うと、
「諸藩の下屋敷とやらは、いったい女子どもに如何なる躾をしておるのか。頭が痛うなるわ」
顳顬を指で押さえて、ほぐすように揉み込む。
「も、申し訳ありませぬ」
舞ひつるは三つ指をついて、深々と頭を下げた。
「……あ、ありがとうございまする」