大江戸シンデレラ

多喜の目に、数日前と寸分変わらぬ反物のままの木綿地が映った。しかも、二本ともだ。

「……そなたは、わたくしの申すことが聞けぬと云うのだな」

今の今までわなわなと細かく震えていた唇が、なぜかぴたりと止んだ。

だが、怒りが鎮まったわけではない。むしろ、逆である。

人と云うものは、怒りが(いただき)まで達すると、却って抑えた声音になるものだ。

よって、聞く者にとっては心の臓が凍てつくほど、凄まじく恐ろしい響きとなる。


「も…申し訳ありませぬ」

美鶴は、板の間に額を擦りつけて謝った。

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