大江戸シンデレラ
改めて、美鶴は考えてみた。
今のおのれは、何のために此処に連れてこられたのか、さっぱり判っていない。
であるならば、せめて身の上に置かれた状況がはっきりとするまで、息を潜めるように大人しくしているのが得策かもしれぬ。
——わっちは縫い物でもして、この間を持たすのがよろしなんし。
浴衣の反物は引き上げられてしまったが、針箱はあるのだから、布切れさえあれば縫うことはできる。
幼き頃より精進してきた歌舞音曲など同じ「稽古」だと思って励めばよい。
——幸いなことに此処は納戸でありんす。探れば、なにか出てくるかもしれぬなんし。
かように思い立つと、美鶴は部屋の中を探し始めた。
果たして、古びた箪笥の抽斗の奥に、なにかで余ったであろう布の切れ端があった。