大江戸シンデレラ
何人たりとも手出しのできぬ妓である合図として、見世からは振新のお仕着せとしていつも真っ赤な振袖を与えられていた。
だが、見世に出ていない今は、町家の娘のような黄八丈の着物に黒繻子の掛け襟、真っ白な前掛け姿だ。
かような出立ちにもかかわらず、花街で生まれ育ったゆえの、そこはかとなく匂い立つ色香はどうにも隠せなかった。
「浅葱裏」と揶揄される無骨なお武家の男たちが、さような女子を黙って見過ごせるわけがない。
「おい、女郎のくせに黙ったまんまとは、無礼な奴だな」
案の定、男たちがどんどん間合いを詰めてきた。
「なぁ、女郎ってのは、見世では一晩に何人もの男と寝るんだろ。
だったら、これからおれらをまとめて相手にすることくらい、何でもねぇよな」