大江戸シンデレラ
美鶴は、再び糸を通した針を持った。
流石に何回か繰り返していると、だんだんすんなりと糸を通せるようにはなってきた。
いざ、格子柄の布に向かう。
格子の線に沿って、四半寸(約七ミリメートル)ほどの目で、なるたけ丁寧に針を動かし縫っていく。
——やはり線のあった方が、存外に縫いやすくなりなんした。
ようやく縫い物に「手応え」を感じ始めた。
そして、次々と何本もの線を縫っていくうちに、四半寸だった縫い目がどんどん細かくなっていった。心なしか、糸を運ぶ早さも出てきたかもしれない。
なにより、持て余していた間を持たせることができるようになった。
そんな折——
多喜がひさびさに美鶴の目の前に姿を現した。