大江戸シンデレラ
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以後、美鶴は左手に綿布、右手に縫い針を持ち、明けても暮れても雑巾を縫うこととなった。

持ち込まれた布は、稽古していたときのような格子柄ではない。

(かすり)(しま)であらば御の字で、たいていは模様のほとんどない布地である。

かような布は、まだまだ美鶴では手に余り、真っ直ぐ縫い進めることができない。

よって、何度もやり直した。

しかしながら、なんとか十枚ほど仕上げたそのとき、多喜がおさと(・・・)を伴って姿を見せた。


中に入ってきた多喜は、重ねて積んでいた雑巾のうちの一枚を(つま)み上げた。無地の物であった。

それをじろりと見たかと思いきや、美鶴の目の前に立つ。

正座する美鶴は、立ったままの多喜を見上げた。

すると、そのとき——

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