大江戸シンデレラ

「……やり直せ」

一言だけ云い放つと、すぐさま多喜は縁側へ出た。

そして、其処(そこ)で控えていたおさと(・・・)に向かって、

「あのような不出来を近所に返せば、我が島村家は末代まで笑われるわ……恥知らずめが」

吐き捨てるようにそう云い残したかと思うと、瞬く間に去って行った。


「お嬢、御新造さんがあぁ云うてなさるんで、(ほど)いて縫い直しておくんなせぇ」

おさともまたそう云うと、立ち上がって多喜のあとを追って行った。

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