大江戸シンデレラ

——どれほど蔑まれたことを云われようとも相手にせず、かような(ところ)から(はよ)(のが)れなんし……

舞ひつるは(たもと)で顔を隠しつつ、さっと(きびす)を返した。

樹々が鬱蒼としていて昼間でも陽の当たらぬ薄暗い路地裏の小堂へは、やはり女子(おなご)一人で来ていい処ではなかった。

——人通りのある大路に、一刻も早く……


ところが、すかさず五人のうちの一人が、すっと出てきて舞ひつるの行く手を遮ってしまう。

それから何度踵を返しても、どの方位を向いても、必ず五人のうちのだれかによって行く手は遮られる、というふうになってしまった。

それどころか、五人の男たちと自分との間合いがどんどん詰められていく。

とうとう、男たちに取り囲まれるような格好になってしまった舞ひつるは、口を開いた。


「……お武家さま。お頼申しなんし。
どうか、わっちにこの道を通しておくんなんし」

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