大江戸シンデレラ
「ところで、そなたはずいぶんと口数が少のうござるな……あ、そうであった」
突如、広次郎は思い出したようだ。
「そなた、国許の言葉が抜け切らぬそうでごさるな。もしや、気にしてござるのか」
どうやら、さようなこともこの家の主人から聞き及んでいたらしい。
美鶴は渡りに船とばかりに、ぶんぶんと肯いた。
すると、広次郎はしばらくなにやら思案したかと思うと、
「ではな、美鶴殿……
某が万事手配するゆえ、この北町奉行所の組屋敷で暮らすにあたって欠かせぬ言葉やら作法やらを学んでみてはどうか」
と、告げてきた。
美鶴の目がパッと輝く。
これこそ——渡りに船であった。