大江戸シンデレラ

おさとを供にして、美鶴は初めて当家の主人(あるじ)の部屋があると云う母家の()に立ち入った。

そして、主人の部屋である座敷の前までやって来た。

先導していたおさと(・・・)が脇へと下がって控える。

美鶴は中庭に面した縁側の明障子(あかりしょうじ)の前で、流れるように着物の裾を捌き、すっと腰を下ろして正座した。

「美鶴にてござりまする」


「……入れ」

短い返答があったあと、美鶴は明障子に手を添えると、すーっと横に引いた。


「お初にお目にかかりまする。美鶴にてござりまする」

美鶴は深く平伏した。

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