大江戸シンデレラ

島村の家も百坪はあろうかという家屋敷ではあったが、此処(ここ)はその何倍もあろうかという、あたかも御大尽の住む御殿のようであった。

思わず浮き足立ち、美鶴は周囲(ぐるり)をきょろきょろと見渡しそうになる。

されども、指南を受けた刀根からの「武家の女」としての心得を忘れてはならぬ。

先ほどの女中に先導されて、美鶴は渡り廊下を楚々と進んだ。


そして、ある座敷へと案内(あない)される。

座敷の中には、数人のおなごたちが待ち構えていた。

「……『祝言』まで(とき)がねえんで、早速取りかからせてもらいやす」

年嵩(としかさ)の女がきっぱりと告げる。

それを合図に、おなごたちが美鶴の周りを取り囲んだ。

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