大江戸シンデレラ
゜゚・*:.。. .。.:*・゜゚・*:.。. .。.:*・゜゚


ちょうど、尚之介が江戸町二丁目の筋から大門側に一本入った伏見町の(かど)っこに祀られた明石稲荷の御堂(みどう)にさしかかったときであった。

樹木に目隠しされたその小堂の周囲(ぐるり)は、路地裏どころか人気(ひとけ)のほとんどない、吉原の(はじ)の端である。

不意に、中から鈴のようなか細い声が聞こえてきた。


「……お武家さま。お頼申しなんし。
どうか、わっちにこの道を通しておくんなんし」

< 240 / 460 >

この作品をシェア

pagetop