大江戸シンデレラ
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祝言を終えた美鶴は、また女中に手を引かれて花嫁御寮の支度をさせられた座敷へと連れてこられた。

そして、待ち構えていたおなご(・・・)たちによって髪も化粧(けわい)も着物もすっかり元の(さま)に戻された。


その後、屋敷の裏口から門外に出されると、其処(そこ)には駕籠(かご)が一つだけあった。

花婿である広次郎(ひろじろう)の姿は、祝言の場以来見ていない。

おなごと違って(おのこ)は、紋付きの羽織袴以外には()れと云った支度がないゆえか、おそらくは先に家路に着いたのであろう。

促されるまま美鶴が中へ乗り込むと、すぐさま(むしろ)が引き下ろされた。

駕籠舁(かごか)きの掛け声とともに身が浮き上がったと思うと、再び掛け声がしてゆっくりと歩み出した。


道中、駕篭の天井から垂らされた紐を両の手でしっかりと握りしめて我が身を支えつつ、美鶴は思った。

——本日()れよりは、島村の御家(おいえ)にて、
広次郎さまを交えて住むことになりなんしか……

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