大江戸シンデレラ
◇萌芽の場◇
その後、舞ひつるは少し離れた処を歩く兵馬に見守られながら、久喜萬字屋へ戻った。
昼見世が始まる前の、まだだれも座っていない張見世に上がって、籬(格子)の隙間から表の大通りを眺める。
すると、兵馬がすーっと前を通り過ぎるところであった。
ふと、目が合う。
兵馬がふっ、と笑った。
怖いもの知らずな、文字どおり「向かう処、敵なし」の不敵な笑顔だ。
舞ひつるは、急に頬が火照ったような気がして、思わず目を伏せた。