大江戸シンデレラ
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巳の刻(午前十時)、(くるわ)では(おそ)朝餉(あさげ)が始まる。

部屋待ち以上の遊女たちは二階(うえ)其々(それぞれ)の座敷で摂るが、廻り部屋の女郎たちは一階(した)の大広間で一斉に食す。


舞ひつるは羽衣の座敷にいた。

呼出(よびだし)」のいない今の久喜萬字屋では最高位になる「昼三(ちゅうさん)」の一人、羽衣が舞ひつるの「姉女郎」だ。

昼三ともなると、我の仕事だけをすれば良いというわけではない。

世話になっている見世への恩返しのためにも、初見世後に人気になりそうな「上玉」を「妹女郎」として側に置いて、一人前の遊女にせねばならぬ任も加わる。

年端の行かぬ女子(おなご)たちに、遊女らしいしゃなり(・・・・)とした所作を叩き込むのは元より、唄に三味線(おしゃみ)に舞にと歌舞音曲の稽古をつけ、さらには身に(まと)う着物や(かんざし)、喰い扶持の面倒までもみてやらねばならない。

それゆえ、見世の上位に駆け上れば上ったで、稼げる揚代(おあし)が跳ね上がったとしても、出て行く金が半端なかった。

さすれば、余計に負い目(借金)が(かさ)んでいき、結局のところ儲かるのは見世ばかり、って寸法だ。

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