大江戸シンデレラ
「姑上様、旦那さまは御役目でござりまするゆえ……わたくしは、とくと心得ておりまする」
美鶴があわてて取りなすと、座敷の入り口で控えていた女中のおせいが、突然がばりとひれ伏した。
「ご、御新造さん、お労しや……」
畳にぺったりと額をつけて土下座したかと思えば、おいおいと泣き始める。
「若さまが……生まれなすったときからお世話さしてきた……あたいのせいで……御新造さんにこんな思いをさしちまって……」
「おせい、幾度もそなたの所為ではあらぬと云うておろうが。
すべて……わたくしの育て方が悪かったのじゃ」
志鶴は無念至極とばかりに唇を噛み締めた。
「わたくしはご先祖様に……
今は亡き舅上様と姑上様に……
あの世へ参っても、到底顔向けできぬ……」
「お、奥様……っ」
おせいは肩を震わせ、ただただ咽び泣く。