大江戸シンデレラ

その後、美鶴の健気にも耐える姿は、おせいによって(へっつい)のある土間で、ほかの女中たちに涙ながらに語られた。

それを聞いた女中のうちの一人が、仲良くしている中間(ちゅうげん)に事細かにしゃべった。

やがて、その中間から仲間内で、その些細が口の端に(のぼ)った。


すると、瞬く間に松波の家人の「御新造さん」への株は、極楽浄土のある天上まで鰻登りした。

その代わり、御家の次代を担う「若旦那さま」の株は地獄谷の底まで真っ逆さまに堕ちた。

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