大江戸シンデレラ
駕籠舁きの男たちの足が止まって、駕籠が地面に下ろされる。
早速、垂れ筵がはらりと捲られる。
「御新造さん、お待っとさんで。着きやした」
にっこりと笑ったおさとの顔が其処にあった。
「お足元、お気をつけくだせぇ」
おさとは甲斐甲斐しく美鶴の手を取り、駕籠から出るのを介添えする。
「お、おさと……」
駕籠から出た美鶴は、目の前に建つ家屋を見て、目を見開いた。
駕籠舁きの男たちに手間賃を支払うため、帯に挟んだ紙入れを出していたおさとが振り向く。
「こ、此処は……何処じゃ……」
美鶴は目の前の家屋を指差し、震える声で尋ねた。
其処は——南町の組屋敷にある、松波家の御屋敷ではなかった。