大江戸シンデレラ

——精一杯、気負ってきたつもりでござったが……

美鶴は情けなくて、我が身を(あざけ)るかのように力なく口の端を上げた。

——奉公人(おさと)の目からは、さように見えておったのか……

ようやく出た笑みのごときものであったが、当然のことながらまったく「笑えて」はいなかった。

やはり、吉原の(くるわ)で生まれ育った(おんな)が「武家の妻女」になるなんて、どだい無理な話であると美鶴は思わずにはいられなかった。


「御新造さん、このまんまじゃ……
早晩、その心が壊れっちまいやす」

美鶴の足を拭い終えたおさと(・・・)は、きっぱりと告げた。

「しばらくは、島村の旦那様が用意しなすったこん家を『実家』だと思って、養生なすった方がいい」

美鶴は、(うつ)ろな目でこくりと肯いた。

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