大江戸シンデレラ
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それから、一回り(七日間)ほど過ぎた。

松波の御家(おいえ)を出て、美鶴のずっと張っていた糸が、ぷつり、と切れてしまったのか、すっかり気が抜けた。

食餌や掃除など身の回りの世話は、おさとが一手に引き受けてくれている。

ゆえに、美鶴は松波家にいたときと同じように、手持ち無沙汰に縫い物をして(とき)をやり過ごしていた。


美鶴は縫いかけの藍鼠の布地を手に取った。

おさとが松波家から美鶴の着替えとともに持ってきてくれた、塩沢紬の細かい蚊絣の地だ。

姑の志鶴に支度してもらったこの布で、美鶴は夫である兵馬のために着流しを縫っていた。

いっとう初めに縫い上げた浴衣は、すでにおせい(・・・)に預けてあった。

くれぐれも……美鶴が縫うたものであることは云わぬようにと固く口止めをして。

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