大江戸シンデレラ

「これらはそなたの嫁入りの際に、『持参金』として松波様の御家(おいえ)に献上されたものでござる」

美鶴はまじまじと巾着の中の大金を見つめた。

「その際は、義父(ちち)勘解由(かげゆ)(めい)により、(それがし)が松波様の御家へ持参したのでござるが……」

「さ…さようでござりまするか……」

「まさか、再びそなたの(もと)へ戻ってこようとは……」

そのとき、広次郎の切れ長の澄みきった目が、美鶴をまっすぐに射抜いた。


「……美鶴殿」

広次郎は「奥方様」とは呼ばなかった。

「これが……如何(いか)なることか、お(わか)りか」

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