大江戸シンデレラ

無理もない、と美鶴はうつむいた。

あのように突然、御家を出たのだ。

——きっと、姑上様は……
お怒りになっておられるのであろう。


「美鶴殿……」

もう一度名前を呼ばれて、(おもて)を上げる。

広次郎の切れ長の目に、今までに感じたことのない熱が篭っていた。


「……三年、待ってはくださらぬか」

< 355 / 460 >

この作品をシェア

pagetop