大江戸シンデレラ

「そなたが離縁して、松波の御家を出られたとしても、すぐさま再嫁は難しゅうこざる」

さようなことがあらば、世間からは美鶴と広次郎に「不義密通」の疑いが掛けられるであろう。


「されども……三年経てば……」

恐らく、世間の目も緩むに違いない。

むしろ「武家の女」としては、一刻も早く再び嫁いで、今度こそは婚家のために身を粉にして尽くさねばならぬ。

そして、再び嫁する際には、ますます如何(いか)なる御家であろうと抗うことはできぬ。

おそらく、うんと歳の離れた御仁の後妻(のちぞえ)が関の山だ。

もしくは、与力のような立派な士分の御家ではなく——


「今度こそ、そなたを……

(それがし)の妻に迎えることができる」

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