大江戸シンデレラ
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(おそ)朝餉(あさげ)を終えた(おんな)たちは、売れっ()であらば身体(からだ)(やす)めるために午睡(ひるね)のひとつもできようが、昨夜(ゆうべ)客がほとんどつかずにお茶を()いていた女郎は昼見世こそはと息を巻く。

そして、「見習い」の妹女郎たちは、姉女郎から歌舞音曲の稽古をみっちりとつけられる。

さらに、舞ひつるのような見世から特に目をかけられている振袖新造は、その道の第一人者の師匠から歌舞音曲のほかに、 (ちまた)流行(はや)りの狂歌や川柳はもとより、我が国の古典書だけでなく(もろこし)の国の漢籍までも仕込まれた。

(くるわ)主人(あるじ)が手配した師匠たちが、わざわざ町家の方から吉原まで通いでやってくるのだ。


今の久喜萬字屋の振袖新造(ふりしん)は、舞ひつると(たま)()の二人だ。

舞ひつるが今の久喜萬字屋の最高位「昼三(ちゅうさん)」である羽衣の妹女郎に対して、玉ノ緒は同じく昼三の玉菊(たまぎく)の妹女郎だった。

姉女郎たちが真の最高位である「呼出(よびだし)」を目指して我こそはと(しのぎ)を削っているのと同様に、舞ひつると玉ノ緒もまた(きた)るべき初見世に向けて、鍔迫(つばぜ)り合いをしていた。

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