大江戸シンデレラ
兵馬は怒りを鎮めることなく、初夜の床で「妻」を手荒に抱いた。
女を抱くのは初めてではない。
見習い与力として奉行所に上がった当初、先輩与力に「浮世を知れ」と云われて岡場所へ連れて行かれ、幾度か妓を買った。
されども、花街の手慣れた玄人ではなく、市井の手慣れぬおなごを抱くのは初めてだった。
「妻」となった者は、たとえ好いた男がいようと、やはり「武家の娘」である。
生娘であった。
兵馬によって無体に其の身を暴かれ、額に脂汗を浮き出せながら歯を食いしばって耐えている。
知らず識らず、兵馬の腕を握りしめる其の指が、夜目にも白くなるほど力が込められていく。
されども——
兵馬は、己が開いたばかりの其のか細い隘路を、穿ち続けるのを止めることはできなかった。