大江戸シンデレラ
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その後、帯刀は兵馬に向かって、

『無情にも、おまえは祝言を挙げたばかりの嫁御を放っておく気かっ』

さんざん(たしな)めたが、やはり喉から手が出るほど欲する「話の種」には勝てず……

『やむを得ぬ……好きにしゃあがれ、この野郎っ』

吐き捨てるようにさように告げ、渋々承諾するほかなかった。

兵馬はしばらくの間、佐久間の御家(おいえ)に身を寄せ、其処(そこ)から出仕することと相成(あいな)った。

このことは、佐久間の家内の者たちには『他言はするな』と固く口止めされた。


そして今、兵馬は奉行所での御役目の合間を縫って、密かに吉原の面番所を訪れていた。

「そいで……頼んでた『舞ひつる』のことだけどよ」

早速、岡っ引きの伊作に頼んでいた件を尋ねる。

「あっ、訊いてきやしたぜ。
流石に久喜萬字屋の(もん)は口が(かて)ぇから、見世をよく知る周りの者に喋ってもらいやした」

それから伊作は、祖母・母親が二代続いた吉原の「呼出(花魁)」で、舞ひつるは祖父の顔も父親の顔も知らぬとは云え、どうやら二人ともお武家であるらしいなど、訊き込んで知り得たことを話した。

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