大江戸シンデレラ

「そうか……そんで、まだ振袖新造(ふりしん)として見世に出てんのかい」

あの待ちぼうけを喰らった大川の川開きの夜から、すっかり暦は巡っていた。

舞ひつるが、いよいよ春を(ひさ)ぐ「遊女」として、いつ座敷に出されていてもおかしくなかった。

「いや……それが……」

伊作の顔が、にわかに曇った。


「舞ひつるの姿が、まるで神隠しにでも遭ったみてぇに……ぷっつりと、この吉原から消えてんでさ」

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