大江戸シンデレラ
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(あく)る日、兵馬は非番であった南町奉行所の朋輩で義弟の本田 主税に、明晩の宿直(とのい)を代わることを条件に、本日の御役目を引き受けさせた。

身体(からだ)の空いた兵馬は、ひさかたぶりに実家である松波の御家(おいえ)に帰ることにした。


その道すがら、兵馬の心に(よぎ)るのは……

——御前様が、あいつを身請けされたのであろうか……


いくら「側室」にする心算(こころづもり)であろうと、大名家が吉原の(おんな)を身請けするなぞ、やはり一筋縄ではいかぬことだ。

そう云えば、御前様の懐妊されていた奥方様が、つい先頃、御胎の御子(おこ)(はかな)くされたばかりだと聞き及んでいた。

ゆえに、それを(おもんぱか)った御前様が、奥方様に知られることなく舞ひつるをあの町で囲っているのかもしれぬ。


——とにもかくにも……

一刻も早く、仔細を確かめねば……

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