大江戸シンデレラ
゜゚・*:.。. .。.:*・゜゚・*:.。. .。.:*・゜゚


広次郎が立ち去ると、逸されていた兵馬の目が妻の方に戻った。

「美鶴」

夫から……初めて、名を呼ばれた。


吸い寄せられるように、夫の姿を見上げる。

(かしら)は粋な本多(まげ)にその精悍な面立(おもだ)ちは、相も変わらず(ちまた)では勝手に浮世絵にされるのではないかと云われるくらい、鯔背(いなせ)な男ぶりであった。


「ようやっと……おめぇさんの『真名(まな)』が知れたって()うのによ」

兵馬は苦々しげにつぶやいた。

< 431 / 460 >

この作品をシェア

pagetop