大江戸シンデレラ
「そ、それは……」
しくじった、と美鶴は思った。
百戦錬磨の奉行所の町方役人である兵馬に、海千山千の廓で育ったとは云え所詮は「箱入り」であった美鶴の嘘が罷り通るものではなかったのだ。
「そなたは……」
兵馬の物云いが武家の其れに変わった。
「そないにしてまでも、あの同心を庇うのか」
美鶴の顔から、さーっと血の気が引いていく。
今度こそ、もう我が身の命はないであろう。
怒れる兵馬の太刀で一刀両断、叩っ斬られてもおかしゅうはない。
美鶴は覚悟した。
——かくなるうえは、
廓育ちの妓としても……
武家の妻女として嫁いだ身としても……
いずれにせよ、口を割るつもりはない。
せめて潔く、見苦しゅうない「最期」にせねばならぬ。
だが、そのとき——