大江戸シンデレラ
「なっ、なんだとっ」
力なく伏し目がちであった兵馬が、瞬く間に勢いを取り戻す。
その目はたった今、火が放たれたかのごとく俄に熱を帯び始めた。
「島村とやらは、なにゆえにそないなことを……」
しかしながら、此ればかりは当人に聞かねばわかるまい。
「祝言のときは綿帽子の陰でまったく『旦那さま』のお顔は見られでなんしゆえ、若さまであることを知りなんしたのは……夜になって寝所に参ったときでありんす」
「そうか……それで、そなたは閨であの同心の名を呼んでおったのか……」
ようやく、合点がいった。