大江戸シンデレラ
兵馬には訊きたかったことが、もう一つあった。
「そなたは、青山緑町の御前様を知ってござるか」
安芸国・広島新田藩の三代藩主、浅野 近江守のことである。
「存じておりんす。
御前様は見世では姉女郎の娼方でなんしたゆえ、妹女郎のわっちらも贔屓にしておくれなんした」
「そうか……御前様は畏れ多くも、うちの父の昔馴染みであらせられる。ゆえに、某のこともご存じでござる」
「……さようでありんしたか」
——若さまとは、こないに生まれの違う者同士であるというに……
美鶴は、兵馬との間に「縁」のごときものを感じた。