大江戸シンデレラ
その日は、どうやらお天道様がご機嫌斜めで、朝から雲行きが怪しかった。
果たして、舞ひつるが手を合わせていつもの願掛けを終えたところで、にわかにザーッと雨が降ってきた。
舞ひつるはあわてて小堂の軒先に入ると、薄墨色の空を見上げた。
——あぁ、やっぱり番傘を持ってくればよかったでなんし。
そして、若さまは……と辺りを見渡したが、兵馬の姿がない。
——いったい、何処へお行きなんし。
かような雨では、たちまちのうちにびしょ濡れになってしまうと、舞ひつるが案じたそのとき……
「おい、おめぇ、こっち来な。
そないな庇じゃ、役に立たねぇ。
見る見る間に濡れ鼠になっちまうぜ」