大江戸シンデレラ

一見ぞんざいに座しているかに見えて、決して下劣ではない兵馬の姿を、舞ひつるはさりげなく目の端で捉えた。

——やはり、かの浮世絵与力の(てて)親に「生き写し」と、町家の者が噂をしなんしほどの御尊顔でありんす。

そして、兵馬の整った凛々しい面差(おもざ)しに、改めてしみじみと感じ入った。

吉原に生まれついて以来、日々さまざまな殿方を見てきた身であれども、かように思わざるを得ぬ美丈夫であった。

実は、兵馬はそれこそ母の(はら)から出たその日から、皐月(五月)の節句に向けて刷られた浮世絵の武者人形に模されていたのだ。

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