大江戸シンデレラ

「女郎」と「遊女」は似て非なるものだ。

女郎はおのれの身体(からだ)さえ売っていれば済むが、遊女はそうはいかない。

特に、大見世ともなれば客筋は御公儀(幕府)のお偉方に諸国の藩主、さらにお武家の威厳を脅かすほどの財を持つ大商人である。

遊女は、それらの者を至上の楽園、桃源郷に(いざな)うかのごとく遊ばせるのだ。

宴で楽しませるための歌舞音曲はもちろん、座を盛り上げるために、時には気の利いた洒落っ気のある狂歌・川柳をものす。

また、話に登った際に「知らぬ存ぜぬ」では済まされないので、我が国だけでなく(もろこし)(中国)の国の古典の書にも精通している。

そして、相手がご無沙汰の折には寂しさを訴えて書き送らねばならぬゆえ、流れるような美しき字も身につけている。

それらを極めたのが……

遊女の最高峰「呼出(よびだし)花魁(おいらん))」なのだ。

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