大江戸シンデレラ

『來じ』とお云いなんしたお方を、()が身は『待たじ』と云いなんしつつ……」

昼日中(ひるひなか)の今、化粧(けわい)を一切せぬ(かんばせ)にもかかわらず、まるで羽二重のごとく肌理(きめ)細やかでしっとりと艶やかな肌は、抜けるように白い。
そのくちびるだけが、まるで紅を差しているかのごとくうっすら朱がかっていた。

「たとえ我が身がいつしか『山のしづく』になりなんしても……とうとう日が入り果てて『ぬばたまの夜』になりなんしても……」

そっと目を伏せたそのとき、今はしどけなく結い上げただけの黒髪が、はらりと一筋、頬の上に落ちた。

「さりとて来ぬお方を、ひたすら(さと)で待ち続けなんしが……」

えも云われぬ羽衣の色香が、辺りに漂う。


「……『女ごゝろ』でありんす」

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