大江戸シンデレラ

番頭新造のおしげ(・・・)だった。

なぜか顔を赤らめて、肩で息していた。
相当あわてて二階へ駆け上って来たと見える。

「おしげ、(はよ)(ふすま)をお閉めなんし」

羽衣が、じろり、とおしげ(・・・)を見遣る。

羽おりや羽おとが(くるわ)(おんな)らしからぬ振る舞いをした折には、いつも目くじらを立てねばならぬ役目のおしげ(・・・)がこれでは、示しがつかない。

「あっ、申し訳のうなんし……」

おしげは、弾かれたように襖を閉めた。

「めずらしゅうなんし。おしげさんがそないにあわてて……如何(いかが)なんした」

舞ひつるは、おしげを落ち着かせるために淹れた白湯(さゆ)を差し出しつつ尋ねた。

もらった湯呑みをくーっと(あお)ったおしげ(・・・)は、さらに険しくなる(かんばせ)の羽衣を臆することなく、云い放った。


「玉ノ緒が……身請(みう)けされなんし」

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