大江戸シンデレラ
もう直に子の刻を迎える見世は、宴を終えてすっかり静まりかえっていた。
羽衣はすでに今宵の客と閨に入っている。
舞ひつるたちはこってりと塗った化粧を米糠で擦って落としつつ、客が手をつけなかった御膳のお菜を腹が重くならぬ程度に摘んでいた。
もし、羽おりと羽おとの諍いが始まって夜半にもかかわらず騒ぎ立てでもしたら、翌朝舞ひつるやおしげまでもが内所に呼び出されて、お内儀にこっぴどく叱れる羽目になる。
「お廓のことをよう知るお姑がおられなんし。
……玉ノ緒は、きっと幸せになりんす」
舞ひつるは声を抑えてつぶやいた。