大江戸シンデレラ

「玉ノ緒……待て、早まるな」

兵馬は玉ノ緒を制した。

「なにゆえ……いきなり若さまは、わっちを見世の名で呼びなんしかえ……」

玉ノ緒は震える声で(とが)めた。

「玉ノ緒……それは……」

「わっちが……淡路屋さんに落籍()かれなんしたゆえかえ……」

「玉ノ緒……落ち着け」

次の刹那、玉ノ緒は心を振り絞るようなせつない声をあげた。


「あんまりでありんす……
若さまは、もう……わっちのことを……
『おゆ()』とは呼んでおくれでないのかえ……」

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