大江戸シンデレラ
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その日の昼はめずらしく、舞ひつるにはいずれのお師匠の稽古もなかった。
なので、早速妹女郎の禿たちの隣に座って稽古に加わろうとすると、
「舞ひつるは、今日は止しなんし」
姉女郎の羽衣から、ぴしゃりと制された。
「近頃、なにかに取り憑かれなんしたかのごとく根を詰めて精進しなんしゆえ」
「舞ひつる姐さん、心なしか顔色が悪うなんし」
禿の一人、羽おりが気遣わしげに云った。
「わっちも、さように思うていなんした」
もう一人の禿、羽おとも肯く。
「お稽古ちゅう、お邪魔しなんして申し訳のうありんす」
番頭新造のおしげが座敷に入ってきた。
「お内儀さんが、舞ひつるをお呼びでなんし」
「何のご用でなんしかえ」
かような時間に内所に呼び出されるのは滅多とないゆえ、羽衣が尋ねる。
「さぁ、わっちには、なんとも……」
どうやら、おしげには用件を知らせていないらしい。
舞ひつるは訝しみながらも、内所へ行くために腰を上げた。
その日の昼はめずらしく、舞ひつるにはいずれのお師匠の稽古もなかった。
なので、早速妹女郎の禿たちの隣に座って稽古に加わろうとすると、
「舞ひつるは、今日は止しなんし」
姉女郎の羽衣から、ぴしゃりと制された。
「近頃、なにかに取り憑かれなんしたかのごとく根を詰めて精進しなんしゆえ」
「舞ひつる姐さん、心なしか顔色が悪うなんし」
禿の一人、羽おりが気遣わしげに云った。
「わっちも、さように思うていなんした」
もう一人の禿、羽おとも肯く。
「お稽古ちゅう、お邪魔しなんして申し訳のうありんす」
番頭新造のおしげが座敷に入ってきた。
「お内儀さんが、舞ひつるをお呼びでなんし」
「何のご用でなんしかえ」
かような時間に内所に呼び出されるのは滅多とないゆえ、羽衣が尋ねる。
「さぁ、わっちには、なんとも……」
どうやら、おしげには用件を知らせていないらしい。
舞ひつるは訝しみながらも、内所へ行くために腰を上げた。