停留所で一休み
そう。

退職したらお母さんと二人で、ゆっくりお茶でも呑んでという手紙を添えて。

「出海から貰った湯呑みで、お母さんと毎日一緒に、お茶を呑んでよ。」

私は、Burberryのマフラーと同じように、何でもない湯呑を使ってくれている事が、嬉しくてたまらなかった。


「ありがとうな。出海も一香も克己も、優しい人間に育ってくれて、お父さん嬉しいよ。」

そう言って父は、帽子を直すと、マフラーで顔を拭いた。

「あっ……」

「どうした?」

私は、海の方を向いた。

「ううん。何でもない。」

まさかマフラーで顔を拭くなんて。

しかもブランド物のマフラーで!!

私は、心の中で叫ばずには、いられなかった。
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