停留所で一休み
そして港に着いて一時間。

魚も取れず、父も私も、ただひたすら海を眺めていた。


「お父さん、ずっとこんな調子なの?」

「そうだな。」

「飽きないの?」

頬に両手を添えて、私は父を見た。

「まあ……時々は釣れるからな。」

「へえ……」

またしばらくの間、海を眺める。

どこからか、船の汽笛が聞こえてくる。


「暇だね。」

「ああ……そうだな。」

そしてまた、海を眺める。

家でもボーっとして、海でもボーっとして。

私は田舎に帰って来てから、ボーっとしかしていない。

こんな風だから、母にも小言を言われちゃうんだよね。


「お父さん。」

「何だ?」

「お父さんは、私に何も聞かないの?」
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