停留所で一休み
第12話 停留所で一休み
日も傾きはじめた頃、私は小さくクシャミをした。

鼻をすする私に、父はティッシュを差し出した。

「ありがと。」

貰ったティッシュで鼻を拭いた私は、父の側に何か落ちているのを見つけた。

「何か落ちてるよ。」

「ん?」

拾い上げて見ると、それはパスケースだった。

「お父さん、パスケースなんて必要ないじゃん。」

中身は、三年前に実家に帰ってきた時に、姉弟三人で撮った写真だった。


「私達の写真、持ち歩いてるの?」

「見つかってしまったな。」

父は照れ隠しに、帽子を深く被った。

「子煩悩だね~」

「ははは。お父さんは、結婚するのが周りよりも遅かったからな。」

今の私と一緒か。

ふと、そう思った。
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