停留所で一休み
「克己もそろそろ結婚考えてるみたいだし。また孫も数も増えるね。」

「そうか。あいつもそんな年か……」

父は、しみじみとしている。

「だったら、私一人くらい……」

結婚しなくてもいいよねと、言おうとした時だ。

「出海もそのうち、孫の顔を見せてくれよ。」

先手を打たれた。

「孫ならもういるじゃん。」

「これは一香の子供だろ。出海の子供が見たいんだよ。」

それは欲張りというものだよ、お父さん。


しばらくして、陽が傾き始めた頃だ。

「そろそろ帰るか。」

父は釣りざおを片づけ始めた。

「お父さん、車は?」

「いや、運転してこなかった。」

「えっ!!」

私は肩に担いだクーラーボックスを、落としそうになった。
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