停留所で一休み
父の声さえも、自然の声に聞こえてくるから不思議だ。

「おまえの人生は、おまえのものだ。少しくらい遠回りしたっていい。あの時、もっとこうしていればよかった。そんな人生だけは送ってくれるな。」

なんでかな。

自分の事を一番理解してくれているのは、母だと思っていた。

だが今は、父の言葉が一番心に沁みわたる。


「一本乗り遅れた時は、ここに座って休めばいい。焦らなくても、次のバスは必ず来るんだから。」


その時だ。

少し薄暗くなった辺りを照らすかのように、次にやってくるバスの灯りが見えた。

「ほら、もう来ただろ?こうして自然に任せていると、案外早くやって来るものだ。」

父はそう言って立ち上がった。
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