停留所で一休み
すると少し前に、俯き加減で歩くあいつを見つけた。

本村君だ。

そのまま通り過ぎようと思ったけど、昨日の夜、家まで送ってもらった手前、気が引ける。

私は腹を決めて、あいつに声を掛ける事にした。


「本村君。」

私の声に、あいつが後ろを振り向く。

「小形か…」

あいつはわざわざ、立ち止まってくれた。

「昨日は送ってくれてありがとう。」

「ああ。」

「あの後、すぐ帰れた?」

「うん。意外に早く、家に着いた。」

あいつは私の歩幅に合わせて、歩いてくれる。


「珍しいな。小形がこんな時間に、外を歩いてるなんて。」

「なんかさ、母親が婦人会の集まりに家を使うみたいで、追い出された。」
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