停留所で一休み
「特に出海!一番上の姉がそれでどうする!外へ行って頭を冷やして来い!」

私は、カバンだけ持つと居間を出た。

「お姉ちゃん……」

私を追って、一香が立ち上がった。

「放っとけ、一香!」

父が追うのを止めた。


一人外に出た私は、その足でタクシーに乗り、扇屋に来た。

「いらっしゃい!」

ギッちやんは、いつもの変わらぬ笑顔で迎えてくれる。

「ギッちゃん、ビールちょうだい……」

私は、カウンターの席に座った。

「珍しいな。一人で飲みに来るなんて。」

「そうかな……東京じゃあ、当たり前だけど。」

私の前にビールを置いた。


「ならいいんだ。何かあったかと思って、一瞬心配した。」

何かあった、あったと言えばあった。
< 160 / 224 >

この作品をシェア

pagetop